さらばUber

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Uber?そんなもんFu〇ckだ

 

 

 

タクシー産業が強い日本では未だに馴染みが薄いUberだが、ここナイロビでは既に一定層の生活の足として完全に定着している。かくいう私も2カ月滞在した去年も、基本永住になる今回も、毎日2-3回は乗り回している。3年前にナイロビに上陸してから破竹の勢いで規模を拡大し、あっと言う間に二万台に近い登録台数に達した。

 

Uberはとにかく便利だ。アプリを開いて1秒未満で付近のドライバーが地図にマッピングされる。ピックアップ場所を指定し(通常は現在地)、目的地をタイプすれば自動的に付近にいるドライバーとマッチングされる。ちなみに地図情報もかなり詳細に登録されているので、最初の数文字を入力するだけで行きたい目的地がきちんと表示される。なんとか商店、みたいなマニアックなものでも、だ。

 

ドライバーとマッチングされたら、最大でも5分までばドライバーがやってくる。値段はUberが距離や時間帯、需給に基づいて勝手に計算するので、運転手と値段交渉する必要がない。途上国でタクシーに乗るときにはこの交渉が本当に面倒だった。そして、目的地に着いたら事前に登録していたクレジットカードから勝手に料金が引き落とされるので、お金の支払いも発生しない。現金を持たずしてタクシーに乗れるのだ。ナイロビ市内であればだいたいどこでも数台はうろうろしているので、タクシーのように大通りに出て、手を振って捕まえなければならないということもない。早い、安い、手間なしと良いことづくめのサービスなのだ。アメリカ時代からUberを使いまくっている私としては、アイラブUberと毎日叫びたいくらいだ。

 

 

しかし、まったく違う声が反対側聞こえるのだ。

 

 

 

Uber?そんなもんFu〇ckだ

 

 

そう叫んでいるのは一人や二人ではない。というか、私がこちらに来てからほぼ全てのUberドライバーがそう言っている。

 

 

この半年でナイロビ市内のドライバーはUberボイコット作戦を全土で実施している。

 

ウーバーの客からリクエストがくるとキャンセルをくりかえす、乗車中にひどい対応をする、客と集合した時点で「Taxify(競合他社)持ってる?」と聞きUberのリクエストをキャンセルさせてTaxifyでリクエストさせる、等々、とにかくUberのユーザーが不快な思いをするようにせっせとハラスメントをくりかえしている。

 

 

 

この怒りの理由はUberの現地人ドライバーを鑑みない態度で、この1年程で競合との競争が激化し値段を相当切り下げたのだが、それが運転手の収支に直撃していることだ。運転手は自分で値段を決められないので、値段が下がればその分実入りが減る。さらに拍車をかけるように、ガソリン価格がこの半年で10-15%程上昇した。Uberは値段の25%を持っていくので、もはやドライバーには殆ど利益が残らない状況になっている。我々は殆ど稼ぎがないのに、お前らはそれでも25%を持っていくのか?というのが彼らの怒りの根源だ。さらにはこうした怒りをUberのオフィスにぶつけてもほとんど返答がないらしい。

 

最近になって、ドライバーは自主的にUNIONを結成した。UNIONに参加するドライバーを地区に割り振り営業範囲を決めることで競争激化を避けると共に、毎週会合を行って、Uberへのハラスメント作戦を話し合っているそうだ(今日はたまたまナイロビ東地区のリーダーのドライバーが運転手だった)。

 

 

What do you think about Uberとドライバーに聞くと大体の場合、I hate themと答える。更にひどい場合は、I hate Americaとまで言う人もいる。They want to use us as slavesと。

 

 

この状況をUberケニアがどう捉えているか分からない。そうは言っても、どうせUNIONやぶりの輩はいるし、I hate Uberと言いつつもUberを使っているドライバーがいる限りは負けないと思っているのかもしれない。

 

 

ふと気が付くと私もこの三日くらいはUberを使わなくなっていた(代わりにTaxifyを使っている。こちらはエストニアの会社だ)。

 

現地のドライバーがこんなにも怒っているサービスを使って良いものか、という気がしてきたのもある。

 

あれだけI love Uberだった私がUberを使わなくなっているというのは、もしかすると同じような人が結構出てきているのではないかと思う。事実、私自身、別のユーザーに「最近Uberはハラスメントが多いらしいですよ」などと呟いていたりする。そうこうするうちにTipping pointが訪れて、ユーザーもドライバーも、一気にUberを捨て去る時が来るのかもしれない。

 

今、ケニアは一部の間でSilicon Savannahと騒がれ多くのスタートアップが生まれつつある。いつかユニコーンが生まれるんじゃないか、そんな期待感もありつつ、実態は現地人ではなく欧米人が、欧米流のビジネスを、欧米の投資を使って展開しているという域をまだ出ていない。Uberのモデルを見ると、現地でビジネスをさせてもらっているという観点がもしかすると抜けてるんじゃないかという気がしてくる。人の庭で仕事をさせてもらう以上は、そこの関係者にちゃんと満足してもらわないと上手く行かないんじゃないか、欧米スタートアップ流の急拡大・成長モデルは、アフリカだと長期的には成り立たないんじゃないか、そんな教訓をはらんでいる。

 

そんなこんなで生粋のUberファンであった私は、少なくともナイロビではもうUberには乗らない。

 

 

さらばUber